「なぁ」

「なに?」

「あついんじゃけど」

「わたしはさむい」

「あつい」

「さむい」

「あつい」

「さむい」

「・・・重い」

「え、あ、ごめん‥」



ちょっと機嫌悪そうな雅治の声に、それまでくっついていた背中を離した。

瞬時にぬくもりが消える。

ちら、とふり返ってみても、雅治はこっちを向かない。

すきだから、一緒にいたい。

すきだから、くっついていたい。

こんなふうに思うのはわたしだけなのかな。

雅治に背を向けたまま、読んでいた本を閉じ、膝をかかえて縮こまる。

背中合わせなのは変わらないのに、

その離れた数センチが、わたしと雅治の距離を表しているようで。

自分の思いが一方通行なのだと、そう感じた。





と、雅治の動いた気配がして、

それとほぼ同時にふわっと包まれた。だいすきな、匂い。



「・・・・・・まさはる?」

「なんじゃ?」

「・・・重いよ」

「俺の愛情が?」



ずるい。雅治は、ずるい。

わたしが冗談も言えないのを知ってて言うんだ。いつも、いつも。

それぐらい、わたしは雅治のことがすきなのに。



「でも、あついんだよね?」

「さむい」

「でもさっき、」



あついって言ってたじゃない、

その言葉は、雅治によって遮られる。



「誰かさんがおらんとさむいみたいじゃ」



俺んことあっためてくれんかのぅ、

なんて、恥ずかしげもなく言う雅治に、

わたしはすこし泣きそうになりながらも、腕をまわしてしがみついた。

まるで子どもが母親にするそれのように。

さびしかったんだから、

そう言うかわりにぎゅっと力を入れる。

すると、お返しのように雅治の腕にも力がこもった。



「ちゃんとわかっとるよ」



なにが? という言葉は、心の中に浮かんで溶けた。

かわりに、もう一度ぎゅっと力をこめる。



「すまんのぅ、すきだといじめたくなるみたいじゃ」


「・・・・・・・・・ばか」



精一杯の強がりで、小さくつぶやいた。

背中をさする大きな手が、すきだ、と言っているように感じた。








                              かたち、温度


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仁王の練習として去年の11月頃に携帯で打ってたものです。
ふとカレ*ノで、抱き合うよさを感じていたのを思いだしました。
拍手お返事用に作っていたため名前変換なくてすみません。
仁王は余計な言葉はいらないやつだと思います。
だから逆につかみづらかったりするのですが。
ちなみにこのふたりは付き合いたてな感じです。

2008/01/12 なつめ



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