「ねえ、俺と付き合わない?」

 「俺、キミに惚れちゃった!」

 「もう俺はキミのもの!」





 「・・・て、どれがいいですかね?」

 ・・・なんて、下校途中、道端のお地蔵様に聞いてみる。
 お地蔵様はすごく優しそうな顔をしているけど、何も言ってはくれない。
 ホントどーしちゃったんだろ俺。今までこんなに悩んだことなかったのに。
 ちゃんのこと大好きなのに。なのに、どーしていいかわかんない。
 だからもうお地蔵様に頼るしかない!
 ポケットからガムを一枚取り出して供える。目をつぶって手を合わせる。

 「お地蔵様、どうかお願いします・・・」

 「なにしてるの?千石くん」

 ん?なんだこのお地蔵様随分かわいい声出すんだなー・・・って、え!
 振り向くとそこにいたのは、俺のだいすきなちゃん。
 不思議そうな顔で、しゃがみこんでいる俺を見下ろしていた。
 俺は慌ててお地蔵様におしりを向けて立ち上がる。
 (ちょ、マジ、どーしよ!心臓跳びはねてるけど!)

 「どーしたの?お願いごと?」
 「や、これは、その」
 「うん」
 「えーと」
 「うん」
 「あのね」
 「うん」
 「・・・今日さ、」
 「うん」
 「一緒に帰らない?」
 「うん」
 「え、マジで?!」
 「うん、いいよ」
 「やったー!お地蔵様ありがとう!」
 「え?なに?お地蔵様?どうしたの?」
 「気にしない気にしない。さっ、帰ろ!」

 そう言って歩こうと促す俺に、うん、と笑顔でひとつ返事をして、
 俺の隣に並ぶちゃんは極上にかわいかった。(いつもかわいいけどね!)
 そんなちゃんを横目に、俺の心は躍りまくる。もうパレードみたいな。
 だから、うっかりいつもの調子で手を伸ばしそうになって、俺はその手を引っ込めた。
 
 手を繋ぎたかったけどガマン。抱き締めたかったけどガマン。
 好きだと伝えたかったけど、ガマン。
 欲張ったら一気に全部逃げていきそうだから。
 すこしずつ、すこしずつ。
 何より大切なキミだから、キミの気持ち、大切にしたい。
 とりあえず今日はお地蔵様にお礼を言って、ふたり並んで笑顔で帰ろう。



 キミにバレないように振り向いて、俺はこっそりお地蔵様にウインクをした。










 N o h u r r y !


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 特になんのひねりもなく、頭に浮かぶままの勢いで書いたモノです・・・
 実は千石はテニス読んで初めて好きになったキャラでもある。
 
 2007/06/25 なつめ 



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 恋は焦らず。さあ明日は何て言ってキミを誘おうか―・・・