special colors





「せんぱーい、寝ないでくださいよーせんぱーい」

俺の優しい声がけにもかかわらず先輩はすうすうとベッドで寝息をたてている。
今日は俺の英語の課題を手伝ってくれるって話だったのに・・・そりゃないっスよ先輩。
でも、その寝顔がまた可愛くって、俺は理性を保つのに少し頑張ってたりもする。

「せんぱーい、そんな無防備でいると俺襲っちゃいますよー」

と、そんなことを言ってみても起きる気配は全くなく。
まぁ、そうは言ってもここは先輩の家なワケで。
今いる先輩の部屋の真下にはリビングがあって、先輩のキレイなお母様がいらっしゃるから何も出来やしないんだけど。
でもねぇ、健全なオトコノコの前でそんなカオするのは危ないっスよ?先輩。

「なんかイタズラしちゃおっかなー・・・」

小声で呟きながら先輩に近づいていく俺の目に、不意に先輩の腰のあたりで揺れるリボンが飛び込んできた。
ひらひらとした大きめのリボン。今日先輩が履いている、白くて夏っぽい膝丈のスカートについているものだ。
俺はそのリボンと先輩のキレイな手を交互に見つめて、ちょっとした悪戯を思いつく。

(どーかセンパイが起きませんよーに・・・っと)

祈りながら、俺はその悪戯を決行すべく、まず寝ている先輩の前に行ってリボンを引っ張ってみた。
でも、そのリボンは意外ときつく結んであった。何回か引っ張ってみても、ちっともゆるみやしない。
逆にスカートごと引っ張ってしまい、先輩の足がちらちら見え隠れして、疚しい意味で気が散った。
俺は邪念を捨てるべく頭を降り、もう一度、今度はそーっと左手でリボンを抑えて、右手でそーっと引っ張った。
少しリボンが動く。おっ、おっ、と思いながら、そのまま引っ張る。
引っ張って引っ張ってみる、と。

(・・・あれ?何かもう動かないんですけど)

もう一回逆の方向から引っ張ってみる。少し動いたけれど、そのまま調子乗って引っ張っていると、またすぐ動かなくなった。
動かなくなったのはなんでか、なんて考えなくてもわかるぐらい、目の前のリボンは絡まっていた。
最初のあのキレイな原形なんてどこにもないぐらいに。

「なんだコレ。もうワケわかんねーし・・・」

あーあ、と、こんがらがったリボンを見ているうちに、俺も何だか眠くなってきて。
知らないうちに、俺は自分の指にリボンを絡めたまま眠ってしまった。





「ちょっと、ねぇ赤也、起きて」

俺は先輩に揺さぶられて目を覚ました。

「あーせんぱーい、やっと起きたんスかー?」
「やっと起きたのは赤也の方でしょ!ていうか私が寝てる間に何したのよ。リボンぐちゃぐちゃじゃない」

そう言われて自分が先輩のスカートのリボンをいじっていたことを思い出す。俺の指にはまだリボンが巻きついていた。

「まぁまぁ、」
「まぁまぁじゃないでしょ!こんなにしちゃってもう・・・」

そう言って先輩は絡まったリボンに手をかけ、それをほどき始めた。
一生取れなさそうなぐらい派手に絡まっていたリボンは、先輩の手の中で信じられないほどのスピードでほどけていった。
俺の指に巻ついていたリボンも、するりと俺の指から抜け落ちる。
先輩の方へ引き寄せられていくリボンを、俺はしばらく目で追いかける。

1分も経たないうちにリボンはキレイにほどけてしまった。
それを見計らって俺は先輩の細い腕を掴み、彼女の指にリボンを巻きつける。
先輩は起きちゃったけど、今からさっきの作戦決行。

「なっ、なに、いきなり・・・」
「ちょっと待っててくださいよ」

先輩の指にリボンを巻きつけた俺は、急いで反対側のリボンを掴み自分の指にもそれを巻きつける。
片手で巻くのは難しかったけど、何度か適当に巻く。

(まぁこんなんでいっか)

こんなもんでしょ、と、心で納得して、俺は自分の指を俺と先輩の間の空間で持ち上げて見せた。

目の前には俺と先輩の左手の薬指に巻きつくリボン。



「へへっ、運命のリボン」



笑って言ったら、先輩は顔を赤くして「ばか也!」って下を向いてしまったから。

それが可愛くって、俺は先輩を抱きしめてキスをした。







些細なことでも シアワセ感じるのはアナタがいるから。
俺とアナタの色は違うけど、感じるシアワセの色はきっと二人同じだから。
だから、これからもスペシャルな色の世界を、
俺にとってスペシャルなアナタと。










----------------------------------------------------------------------------------
2005年夏にweb拍手お礼として公開していた夢です。
再録するにあたり、名前変換を入れてみたりと少し遊んでみました。
自分的には結構気に入っている話だったりします。
こんな可愛いネタを提供して下さったヤケ太さん&ヤケ太さんの友人さんに感謝です。
ありがとうございました・・・!

2005/08/15 なつめ
2010/04/06 一部加筆修正



Powered by NINJA TOOLS





close