ストライク、バッターアウト!〜another story〜





ついでに、俺のことを名前で呼ばないワケを聞いてみた。

「なー、なんで俺のこと名前で呼ばねーの?俺は呼んでんじゃん?って」
「気になるの?」
「だって端から見たら俺がベタ惚れしてるみたいじゃん。それってなんかおかしくね?!」
「え、でもそうでしょ?」

ズバッと即答。でた!今度は直球!そしてまた、えへへって笑ってるし。かわいーし。
えへへじゃねーよ、と内心思いながらも、頭の中でベタ惚れなのを認める俺ってかわいくね?

「じゃあは俺にベタ惚れじゃねーんだ?」
「いやいやまさか。べったんべったんのぎったんぎったんに惚れてるよ」
「いやお前、ぎったんぎったんて・・・」
「んーまあちょっとしたこだわりがあってね」
「こだわり?なんだ?ソレ」

そう言うと、は俺のことを名前で呼ばない理由を話した。

「わたしね、ずっと切原くんと友達になりたかったの。で、友達になって“切原くん”って呼びたいなって」
「へ?」
「切原くんに面と向かって“切原くん”って言ってみたかったの!」
「なにソレ」
「やーなんだろ、憧れ?だって○○くんなんて今までろくに呼んだことなかったし」
「いや“くん”付けなんて他の男子もそうじゃん」
「他の男子は別なのー。切原くんはわたしが心の奥底から友達になりたいと思った人だからこそ呼びたかった!」
「意味わかんねー」
「わかんなくていいもんっ。なんか特別な感じがするの!もー、呼びたかったって言ったら呼びたかったの!」
「つーかもう付き合ってんだから、名前で呼べばいいじゃん!名前の方が特別な感じだし」
「や、でもほら、呼び方って親しくなるにつれて変わってくものじゃない!」
「は?俺とって親しくねーの?」
「そういうわけじゃないけど〜でも“切原くん”って呼べなくなるなんてもったいないよ!」
「いや、別にもったいなくねーって」
「呼びたいの〜呼ばせてよ〜憧れてたんだもん!名前で呼んじゃったらもう二度と呼べなくなるもん!」

そう言い切って、ははっと何かに気付いたようだ。
俺の目の前に回りこみ、両腕をガッと掴んで俺を見上げ、口を開いた。
目が新しいことを発見した子どもみたいにキラキラ光ってるように見えた。

「そうだよ!逆にこれからのことを考えたら“切原くん”の方がレアじゃん!」

発見したことがこれかと俺はがっかりした。けれどそんな俺の気持ちも知らず、は俺の腕を掴んで横に揺さぶりながら、堪能させて〜!満足するまで呼ばせてよ〜!なんて言っている。そんなに俺は根負けした。こんな妙なこだわりを持ってるなんて。まぁでもさすが告白と友情宣言を混ぜるだけある、なんて妙に納得してしまうところもあったケド。

ハァと盛大に溜め息をつくと、は俺の腕をぐっと引いて「ね、もうちょっとだけだめ?ちゃんと近いうち赤也って呼ぶから!」なんて首をかしげた。それだけで俺の体内がぐぐぐっと熱くなる。こいつ絶対確信犯だ。今、どさくさに紛れてさらりと俺の名前を言いやがった。それに俺がのこういう顔に弱いってこと絶対知ってんに決まってる!ちくしょーわかったよ、もう好きに呼べよ!



結局の可愛さに負けて、ま、いっかとなる俺。
仕方ないからもうちょっとだけおあずけくらっててやるよ。さっきの“赤也”でガマンしてやるよ。
でも一日でも早くその口から“赤也”って言葉を紡いでほしいから。
そんな願いを込めて、可愛い唇にひとつキスを落とした。



(そのこだわりさえも全て包み込む、そんな男に俺はなる!)










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同日UP



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